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◆ かつてペンギンは飛べたのか? ◆

 ペンギンの骨格(こっかく)の特徴(とくちょう)をみると、かつては空を飛んでいた種から進化したのは、まちがいないことはわかっています。
 ペンギンは鳥類の中では、空を飛べるようになる前の古いタイプの鳥類だった、という見方がかつてはありました。しかし実はそうではなく、完全な飛翔能力(ひしょうのうりょく)を持っていた鳥から飛べない鳥に変わっていったのです。またペンギンに限らず、飛翔力を持たない鳥のほとんどは、飛べる鳥類から進化してきたと考えられています。

 次の問題は、なぜ飛ばなくなったのか?ということでしょう。地上を走ることに特化(とっか)した結果飛ばなくなった鳥は、ダチョウやエミューなどでおなじみです。ペンギンの場合は空を飛べなくなったというよりは、水中を飛ぶことをえらんだというべきでしょうか。空を飛ばなくなって飛べない鳥になり、その後海の中を飛ぶ能力を獲得(かくとく)したのではなく、飛ぶ空間を完全に空から海中に変えたという言い方があたっているでしょう。走ることにももぐることにも特化したわけではない飛べない鳥も多く、それらは生息域(せいそくいき)に捕食者(ほしょくしゃ)がほとんどいなかったために、飛ぶ必要が無くなっていったとも考えられます。


 空を飛ぶ鳥には、羽ばたくのに必要な、強力な胸筋(きょうきん)を支えるための竜骨突起(りゅうこつとっき)があるが、ペンギンにもあります。ダチョウやキウイなどのような、陸上生活だけの飛ばない鳥にはそれがありません。また、ペンギンには、高度に発達した小脳(しょうのう)があります。小脳は、空を飛ぶ鳥の行動を調節(ちょうせつ)・統制(とうせい)するのに非常に重要で、ペンギンの小脳が高度に発達しているという点からも、飛翔能力(ひしょうのうりょく)を持っていることがわかります。ただペンギンの場合は、かつては空を飛ぶのに有用だったそれらのものを現在は海中を飛ぶことに使っているため、それらが備わっているからかつては空を飛べたと結論づけるのは単純(たんじゅん)かもしれません。

 それでは決定的に空を飛んでいたといえるものはあるのか?といえば、それは「尾椎骨(びすいこつ)の存在が証拠です。尾椎骨とは尾羽を支える小骨で、ハ虫類系の先祖の長い尾から受けついでいます。その長い尾がすこしずつに短くなり、扇(おおぎ)状に尾羽が生えるようになり飛翔(ひしょう)するに適したものになっていきました。すべての空を飛ぶ鳥にはその長い尾の痕跡(こんせき)が残っているのであるが、ペンギンにもそれがあるのです。
  見方によっては、つばさを使って飛ぶ場合、水中を飛ぶ方が空中を飛ぶよりもはるかにむずかしい。飛ぶということを空中にかぎらず、ペンギンのように水中でも飛ぶと表現できるとすれば、ペンギンは全て鳥類の中で、最もすぐれた飛行家といえるでしょう。


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