ペンギンという名前の語源(ごげん)は、 ラテン語の「太っている」という意味の「ピングウィス」から、スペイン語の「太っちょ」を表す「ペングウィーゴ」が生まれ、それが訛った(なまった)ものとされている。
また、「白い頭」を意味するウエールズ語から生まれたという説もある。本来(ほんらい)北半球で「ペンギン」と呼ばれていた「オオウミガラス」の頭が白いからであるが、この説はイマイチのようだ。
太った鳥である「オオウミガラス」に対して表現した「ペングウィーゴ」が訛って「ペンギン」になったとするのが有力だ。
オオウミガラス(夏羽の姿)→
もともと「ペンギン」は、北半球に生息(せいそく)していた「オオウミガラス」に対する呼び名であった。
左上の絵のように、このオオウミガラスは非常にペンギンに似ている。現在のペンギンと同じように海鳥で、空は飛べない。体長は約75cm、体重5kg。
この鳥は250年もの間、人間に乱獲(らんかく)され続けた。珍しくもない鳥だったので、研究もされていなかったし、満足な標本もなかった。全くの産業用、食用だったのだ。
乱獲の結果、急激(きゅうげき)に数が減り、初めて絶滅の危機(ぜつめつのきき)に気づいたのである。
そのため各地の博物館などで標本が必要になり、コレクターにも高値(たかね)で売れるようになった。その行為(こうい)がますます絶滅に手を貸してしまったのだ。
最後の数十羽は細々とアイスランドのエルディと呼ばれる小さな岩礁(がんしょう)で生息していた。
イギリス人は死体であっても高値をつけ、捕獲(ほかく)のために漁師をやとって容赦(ようしゃ)なくとり続けた。 そのエルディで、この世に残った最後の二羽のオオウミガラスが抱卵中(ほうらんちゅう)であった。そこを捕獲のために上陸してきた漁師におそわれた。オオウミガラスは卵をあきらめて逃げようとしたがそれもかなわず、最後の二羽は殺された。そして抱卵中だった最後の卵も漁師にふみつぶされてしまった。
漁師たちは、それが最後の個体だということは知らなかった・・・
こうして、かつて北半球で「ペンギン」と呼ばれていた「オオウミガラス」は1844年6月4日に完全に絶滅したのである。
オオウミガラスは、人間の商業的な捕獲(ほかく)によって絶滅した最初の鳥であった。
卵は食用に、羽毛は防寒(ぼうおん)の保温材(ほおんざい)とするために、手当たり次第に殺されて、船に山積みにされ、ヨーロッパへと運ばれていたのだった。
人類の蛮行(ばんこう)によって絶滅させてしまったオオウミガラス。その反省をこめて、アメリカ鳥学会の会誌には、「オオウミガラス」を意味する『Auk』という名称(めいしょう)がつけられている。
合掌(がっしょう)・・・